多嚢胞性卵巣症候群が原因のニキビ・吹き出物の治療方法とは?

ニキビ・吹き出物の写真 成人女性の場合、ニキビ・吹き出物が多発してしまう原因の一つに、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」という婦人病である可能性があります。多嚢胞性卵巣症候群であれば、必ずニキビや肌荒れを起こすとは限りませんが、この症状は血中男性ホルモン値が高くなることが多いため、ニキビや多毛などの男性化現象を引き起こすことがあります。

男性ホルモンは、皮脂腺に作用して皮脂分泌を促す作用や、角化異常(にきびの初期段階になるもの)を起こす作用などがあり、ニキビ・肌荒れの原因になることがあります。

多嚢胞性卵巣症候群とは?

ネックレスサイン 多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)とは、排卵がスムーズに起こりにくくなって卵巣内にたくさんの卵胞が溜まってしまう症状です。超音波画像で確認すると、卵巣の表面にそって卵胞がネックレス状に並んでいることから「ネックレス・サイン」と呼ばれています。

排卵のしくみは、卵巣の中にある卵胞に包まれたたくさんの卵細胞が平均的に月に一つずつ成熟し、約2cmほどの大きさになると破裂して排卵します。多嚢胞性卵巣症候群は、卵胞が卵巣の中に溜まってしまうことで排卵が起こりにくくなります。

多嚢胞性卵巣症候群は、英語で「polycystic ovary syndrome」といわれ、略称では頭文字をとって「PCOS」または「PCO」と呼ばれます。

多嚢胞性卵巣症候群の症状

  • 生理不順、無月経などの月経異常。
  • 黄体ホルモン分泌不全による症状。(月経過多、過度の出血など)
  • 男性ホルモン(テストステロン)の増加による症状。(ニキビ、肌荒れ、毛穴の開き、体毛が毛深くなるなど)。
  • 不妊症。

日本人の場合は、血中男性ホルモン値が必ずしも高くならないことも多いです。一方、白人種では男性ホルモン値がはっきりと高値を示すことが多いです。

多嚢胞性卵巣症候群の原因とは?

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因ははっきりとよくわかっていませんが、「内分泌異常」、「糖代謝異常」などが大きな原因だとされています。

内分泌の異常

通常、脳下垂体から「黄体形成ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」がバランス良く分泌されて卵巣に働きかけ、卵胞の発育を促しますが、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の人では、このバランスが乱れ、黄体形成ホルモン(LH)の分泌が増えてしまうことで卵胞が上手に成長できずに排卵が起こりにくくなると考えられています。

肥満・糖代謝異常

多嚢胞性卵巣症候群は糖代謝異常によるインスリンの増加が関係しているとされています。インスリンとは、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンで、血糖を下げて糖分を細胞に取り込む働きがあります。

そのインスリンが増加する要因としては、肥満などの影響でインシュリン抵抗性が増加して糖分が身体に取り込まれなくなり、糖を細胞に取り込むために過剰にインシュリンが分泌してしまうようになることがあげられます。増加したインスリンが卵巣内に作用して男性ホルモンの増加を促し、症状を引き起こすのではないかといわれています。実際に、多嚢胞性卵巣症候群の多くのケースが肥満であることがわかっています。

食生活やストレスなどが大きく影響する?

近年、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)が増えているといわれています。その原因は食生活の影響、肥満、ストレスなどが内分泌系に影響を及ぼしているためと考えられています。多嚢胞性卵巣症候群は現代病の一つであるようです。

多嚢胞性卵巣症候群の検査方法

多嚢胞性卵巣症候群の検査方法は、一般に血液中のホルモン濃度検査や卵巣の超音波検査(エコー検査)で診断します。また、腹腔鏡下手術で卵巣のわずか一部を採取して検査をする方法もあります。日本産科婦人科学会の診断基準では、以下の事項が症状の判別に用いられます。

  • 超音波検査(エコー検査)によって卵巣内に通常よりも多い数の卵胞が認められる。
  • 月経異常(月経不順、無月経など)がある。
  • 血中の黄体形成ホルモン(LH)が卵胞刺激ホルモン(FSH)よりも高い値を示す。
  • 血中男性ホルモン(アンドロゲン)が高い値を示す。

卵巣内に卵胞が多く認められる場合でも、月経異常やホルモン濃度の異常をともなっていなければ場合は疾患とは扱われません。卵巣に多くの卵胞が存在する人でも排卵がきちんと行われているケースも多いです。

治療は必要? 放置していても大丈夫?

多嚢胞性卵巣はとても多い症状で、月経異常やホルモン異常などが確認できなければ特に病気として扱われず、その場合は治療の必要はないとされています。

ただし、症状の進行した場合は、何か月もの期間にわたって生理がこない状態が続くことがあり、それを放っておくと50代ごろから子宮体癌(しきゅうたいがん)といわれる卵胞ホルモン(エストロゲン)の蓄積の影響による婦人病のリスクが増加する可能性があります。また、症状が進行すると男性ホルモンが上昇することがあり、それによってニキビ、ベタベタ肌、毛が濃くなるなどの男性化現象を引き起こすことがあります。そういった場合は、婦人科を受診して治療を行った方が良いでしょう。

多嚢胞性卵巣症候群の治療方法とは?

多嚢胞性卵巣症候群の治療は、症状を抑える目的や妊娠を希望するかどうかで治療方法は異なります。

妊娠を希望しない場合

肥満を改善する

運動の写真 多嚢胞性卵巣症候群は、肥満とともに症状が進行する傾向がありますので、妊娠を希望する、しないに関わらず、肥満である場合は改善すべきです。これは、肥満によってインシュリン抵抗性が増加し、それによって血中インシュリンが上昇して卵巣内の男性ホルモンの産生を促すことが症状の要因と考えられているためです。実際に多嚢胞性卵巣症候群の大半が肥満であることもわかっています。そのため、運動や低カロリーの食事をこころがけて体脂肪を落とさなければいけません。

日本人の場合、必ずしも肥満と症状が結びつかないケースが多いです。一方、白人種は肥満と症状が顕著に現れる傾向があります。

糖尿病治療薬の「メトホルミン」の投与

メトホルミンという糖尿病治療に用いられるお薬が多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に効果があることがわかっています。メトホルミンは、インスリン抵抗性が要因の高血糖に対するインスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)の治療薬で、インスリン抵抗性を改善する働きがあります。世界的に広く用いられている糖尿病治療薬です。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因は、増加したインスリンが直接卵巣に働いて卵巣内の男性ホルモン(アンドロゲン)の産生を促してしまうことが影響しているとされています。そして、インスリンが増える要因としてはインスリン抵抗性があることが考えられています。インスリン抵抗性があると、血中ブドウ糖が身体の細胞に取り込まれにくくなって高血糖状態になり、高血糖を抑制するためにインスリンが過剰に分泌されてしまうのです。

メトホルミンは、インスリン抵抗性を改善してブドウ糖が細胞に取り込まれやすくする働きがあり、結果的にインスリンの過剰分泌を抑制する働きがあります。血中のインスリンが減少することで卵巣内のアンドロゲンの減少を促し、症状を改善させる効果があります。

過剰なインスリンが要因の多嚢胞性卵巣症候群には効果が高く、毎日内服して2~3か月で効果が現れてくることが多いです。

男性ホルモン値を下げるには低用量ピルの使用

マーベロン 多嚢胞性卵巣症候群の治療の一つに低用量ピルを用いた治療があります。これは、ホルモンバランスを整えて生理不順を改善する目的で使用されます。また、多嚢胞性卵巣症候群の人が、生理不順や無月経が続くと子宮体がんのリスクが高くなるとされており、低用量ピルはそのリスクを抑えてくれます。妊娠を希望しない場合はピルを服用したほうが良いとされます。

他にも、多嚢胞性卵巣症候群では、血中男性ホルモン値が高くなることがあり、それによってニキビ・吹き出物・オイリー肌、多毛などの男性化現象が進行することがありますが、それにも低用量ピルが非常に効果があります。

ピルとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類の女性ホルモンがバランス良く配合されたお薬で、一般に経口避妊薬として知られていますが、抗男性ホルモン作用があることから、ホルモンバランスを安定させる目的やニキビ治療にも用いられることがあります。

カウフマン療法

カウフマン療法とは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンを生理周期に合わせて適量補い、規則的な月経周期を回復させる治療法です。お薬を使って規則的な生理周期を身体に覚えさせることで、それまでの月経異常の改善を促し、治療後の自然な排卵が期待できます。

カウフマン療法によって無月経症や生理不順が改善したケースも多いです。また、排卵誘発剤を用いた不妊治療をしてもなかなか妊娠が難しかった場合でも、このカウフマン療法で妊娠に成功したというケースは少なくありません。

治療期間は、一般に3ヶ月~6ヶ月間が目安です。

妊娠を希望する場合

排卵誘発剤の使用

妊娠を希望する場合は、排卵誘発剤を用いた治療が第一選択肢です。「クロミフェン」というお薬が良く用いられます。製品名では、先発品の「クロミッド」、ジェネリック医薬品の「セロフェン」、「オリフェン」、「フェミロン」などがあります。効果がなかなか現れない場合は、医師の指導のもとで薬の量を増やしたりします。この方法で大半の多嚢胞性卵巣の患者さんが排卵を起こすことに成功します。

また、それだけでは効果がない場合は、ゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法)という強力な排卵誘発を引き起こす注射療法が行われる場合があります。この方法は非常に高い排卵誘発を起こす一方で副作用のリスクも高い方法です。

多嚢胞性卵巣症候群の場合は、排卵誘発剤の使用後に、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」という卵巣の中の卵胞が一気に成長して卵巣が増大する副作用を起こす可能性があり、経過には注意が必要です。

腹腔鏡手術

腹腔鏡を使用して、卵巣の表面に小さな穴を数か所開けて排卵を促す方法が有効なケースがあります。多嚢胞性卵巣症候群の卵巣は、厚くなったり、硬くなったりすることが多いのですが、卵巣に小さな穴をあけることでスムーズな排卵を促進することができます。卵巣に穴をあけてもしだいに穴が閉じてくるため、持続効果は半年~1年程度だといわれています。入院が必要です。